中耳炎
子どもはプール、
大人はストレスで
中耳炎になる?
「中耳炎」は、鼓膜のすぐ奥にある空間「中耳」で起こる炎症を指します。ウイルスや細菌の感染などが原因で発症し、耳の痛み、耳垂れ、聞こえづらさなどの症状を伴います。
一昔前は「プールで耳に水が入ると中耳炎になる」と言われることがありましたが、「耳に水が入っても、鼓膜の奥に水が入ることはなく、中耳炎を発症することはない」ことがわかっています。
また、ストレスに関しても、中耳炎の直接的な原因になるわけではありません。ですが、ストレスによって免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。これにより感染したウイルスなどが、中耳炎の原因になることがあります。
中耳炎の種類
(症状・原因・治療)
「中耳炎」でよく知られているのは、耳の中で激しい痛みが生じる「急性中耳炎」です。小さい頃にかかったことがある方や、子どもが夜中に急に泣き出して受診させると急性中耳炎だったという方も多いかと思います。
中耳炎には様々な種類があり、症状も異なります。難聴や耳垂れ、合併症を持つ中耳炎もありますので、主な4種類の中耳炎をご紹介します。
急性中耳炎
細菌・ウイルスの感染が原因で中耳に起こる炎症です。特に小さな子どもに多く、3歳までに5~7割の子どもが少なくとも1回は急性中耳炎を発症しています。
症状・原因
強い耳の痛み、発熱、耳垂れなどの症状を伴います。小さなお子さまの場合には、「泣き止まない」「不機嫌が続く」「耳を気にする(触る)」といった機嫌・行動の変化で気づく場合が多くなります。
原因は、細菌・ウイルスの感染です。多くは、感染症をきっかけに、耳管(鼻の奥から中耳へと続くトンネル)を介して感染が広がります。子どもは大人よりも耳管が短く傾斜が緩やかで、なおかつ風邪を引きやすいため、発症する可能性が高くなります。
治療法
通常は、抗生剤や痛み止めなどを使った薬物療法を行います。
重症度によっては、溜まった膿を排出させるため、鼓膜切開を選択する場合があります。切開した鼓膜は、通常1週間ほどで再生し元に戻ります。
滲出性中耳炎
中耳に滲出液が溜まることで炎症を起こす中耳炎です。痛み・発熱の症状を伴わないため、子どもの場合には発見が遅れがちになります。難聴の原因となるため、早期発見・早期治療が大切です。
症状・原因
難聴、耳閉感などが主な症状です。
アデノイド肥大、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などで、鼻をすすることがクセになり、それが原因で中耳が真空に近くなり、滲出液が溜まってしまうことが主な原因です。また、急性中耳炎の後に滲出液が中耳に残って発症するケースもあります。
治療法
去痰剤を使った薬物療法を行います。ただし、子どもの場合には、経過観察をしながら改善を待つ場合もあり、原因となる疾患がある場合には、並行してその治療を行います。
保存療法で改善しない場合は、滲出液を排出させるための鼓膜切開を行います。それでも改善しない場合や、滲出性中耳炎を繰り返す場合には、小型のチューブを鼓膜に設置する鼓膜チューブ挿入術を行います。チューブの留置は数ヶ月~2年ほどかかり、長期の治療になります。
慢性中耳炎
中耳での炎症が慢性的に続くと慢性中耳炎になります。
症状・原因
主な症状は、難聴や耳垂れなどです。
鼓膜に穴があいたままになっていたり、鼓膜が癒着していたりすることが原因です。
治療法
抗菌薬や点耳薬による薬物療法、中耳内の洗浄といった保存療法があります。
これらで症状が治まらない場合や、根本的な治療を行う場合には、鼓室形成術、耳小骨再建術、鼓膜穿孔閉鎖などの手術が必要になります。
真珠種性中耳炎
慢性中耳炎の一種で、鼓膜が部分的にへこみ、そこに垢が溜まって真珠のような塊ができ、炎症を起こす中耳炎です。
症状・原因
先天的な中耳内皮の迷入、後天的な中耳の換気不全が主な原因です。
症状は、難聴、耳垂れ、めまい、顔面神経麻痺、味覚障害などで、まれに頭蓋底の骨が破壊され骨髄炎に至るケースも見られます。
治療法
鼓室形成術、耳小骨再建術などの手術療法が必要になります。
外耳炎
長時間のイヤホンで
外耳炎になる?
外耳炎とは
「外耳炎」は、耳の入り口から鼓膜までの「外耳」で起こる炎症を指します。原因は、過度な耳掃除で外耳の皮膚を傷つけたり、耳栓やイヤホンの装着によって起きたりすることが考えられます。
イヤホンで外耳炎になるケースでは、長時間の装着によって耳の穴が高温多湿になって菌が繁殖し、皮膚の傷に感染することで炎症を起こします。外耳炎の防止には、「外耳を塞がない骨伝導イヤホンに変える」「長時間の装着をしない」ことが効果的です。
外耳炎の主な症状
耳の痛み
耳を引っ張ったり、押したり、顎を動かしたりした時に、耳が痛む。
耳のかゆみ
かゆい時に耳の中を強くこすると、炎症が悪化してさらにかゆみが増す。 アレルギー体質の方は、シャンプーなどの刺激でかゆみが生じる場合がある。
耳垂れ
白や黄色の汁が分泌物となって出る。
難聴
外耳道の腫れ、膿や分泌物の詰まりで、聴力が低下する。
耳鳴り
電子音や金属音に似た「キーン」という高音を感じる。
耳の閉塞感
耳が詰まっているような感覚がある。
外耳炎の原因
外耳炎の主な原因は、耳かきや爪などによって外耳道の皮膚に傷がつくことで、そこから細菌が入って炎症が起こります。
外耳炎は、緑膿菌や黄色ブドウ球菌などの細菌によって発症するケースがほとんどですが、治療せずに長期間放置していると、真菌(カビの一種)によって難治性の外耳炎「外耳道真菌症」に進展することもあります。
耳掃除のしすぎ
外耳炎の原因で最も多いのは、耳掃除のしすぎです。外耳には迷走神経という神経があり、ここを刺激すると気持ちが良いこともあり、耳掃除は習慣になりがちです。頻繁に耳かきをすると外耳道の皮膚を傷つけて、外耳炎の発症リスクを高めることになります。
耳の自浄作用により、耳垢は自然と外へと排出されるため、個人差はありますが、耳掃除は1ヶ月に1回程度、人によってはまったく必要ないと言われています。耳掃除をする際には、硬い耳かきではなく、綿棒で撫でるように耳垢を除去する程度が望ましいでしょう。
イヤホンの長時間使用
イヤホンを耳に装着すると耳の中が高温多湿になり、細菌が繁殖しやすい環境になります。このような状態で耳の中に傷があると、細菌が入り外耳炎を発症しやすくなります。
外耳炎の検査・治療
検査
問診の後、診察では内視鏡カメラを使用して外耳道の状態を確認します。
耳だれがある場合などは一部を採取して細菌培養検査を行い、抗生剤を使用した治療を行う際の判断材料にします。
治療
分泌物などの除去や消毒を行います。これにより聞こえづらさが正常な状態に戻る場合があります。
抗生剤の点耳薬・軟膏や、ステロイドの点耳薬・軟膏を患部に塗布する薬物療法で症状の改善をはかります。炎症の範囲が広い場合や、外耳道湿疹を併発している場合には、抗生剤や抗アレルギー薬の内服が必要になります。また、痛みがひどい場合には鎮痛薬を服用します。
耳垢栓塞(じこうせんそく)
耳垢が奥に押し込み
詰まる!?耳垢栓塞とは
本来は自然に排出されるはずの耳垢が、外耳道に詰まってしまう症状を「耳垢栓塞」と言います。
これは、耳掃除の際に耳垢を耳の奥に押し込んでしまったり、水が耳に入って耳垢が膨張したりすることが原因となります。
聴覚の低下や耳が塞がれているような感覚を引き起こし、日常生活に影響を及ぼすことがあります。
耳垢栓塞になりやすい人
- 湿性耳垢(耳垢が湿っている)方
- お子さま
- ご高齢の方
- 補聴器を使用している方
- イヤホンをよく使う方
- 耳掃除を頻繁に行う方
など
耳垢栓塞の検査・治療
検査
耳鏡や顕微鏡などの機器を使用して耳の内部を確認します。
健康な耳は、鼓膜がクリアに視認できますが、鼓膜が耳垢で覆われて見えなくなっている場合は、耳垢栓塞と診断されます。
治療
耳垢栓塞は、詰まった耳垢を適切に除去することで症状が改善します。
ただし、自分で耳垢を取り除こうとすると、耳垢をさらに奥へと押し込む危険性がありますので、耳垢栓塞の疑いがある場合は、迷わず耳鼻咽喉科を受診してください。
耳そうじの頻度や回数の目安
耳垢は、自然に外へ排泄されるもので、積極的に取り除く必要はありません。耳にとっては、出てきた耳垢を掃除するくらいがちょうど良いと言って良いでしょう。
耳掃除を行いたい場合は、4週間に1回程度、清潔な綿棒を使って耳の入り口に現れた耳垢をそっと拭き取るくらいが理想的です。耳掃除の際に奥まで強く掃除したり、普段から頻繁に耳を触ったりしないよう心がけてください。耳垢を耳の奥に押し込んでしまったり、耳の内部を傷つけて炎症を引き起こしたりする可能性があります。
耳鳴り
キーン・ゴーっと
音がする、耳鳴りとは
耳鳴りとは、まわりで音がしていないのに、耳や頭の中で色々な音が聞こえる状態のことを言います。
耳鳴りの症状は人により異なり、音が鳴っては消えを繰り返したり、継続した音が聞こえてきたりします。
音には、「キーン」「ピー」という高音、「ザー」「ブーン」「ゴー」「ジー」という低音があります。
すぐに治まるケースがほとんどで、一時的なものであれば心配する必要はありません。ただし、耳の病気を原因として起こる耳鳴りもありますので、耳鳴りが続いたり、頻繁に起こったりする場合には、検査が必要になります。
耳鳴りの原因
耳鳴りの原因は様々で、ストレス、疲れ、睡眠不足や騒音、筋肉の痙攣、加齢などによって起こる場合や、突発性難聴、聴神経腫瘍、加齢性難聴内耳、メニエール病、中耳炎などの疾患が関係している場合があります。
片方だけ耳鳴りする
片方の耳だけ耳鳴りがする場合は、その耳に中耳炎、聴神経腫瘍、外耳道の詰まりなど、何らかの異常が発生している可能性があります。聴神経腫瘍は良性の脳腫瘍の1つで、かなり珍しい疾患です。大きな騒音で耳が傷つくことで起こる騒音性難聴(音響外傷)でも、片方の耳だけ耳鳴りが起こることもあります。また、突発性難聴は原因が不明であることが多く、3~4万人が症状に悩んでいると言われています。 聴力の検査では問題ないが言葉が聞き取りづらいのは、脳に情報が伝達される途中にトラブルがある可能性があるので、早めの受診・治療が大切です。
耳鳴りの主な症状
- キーン、ピー、ザー、ゴーといった音が聞こえる
- 耳鳴りで集中できず、イライラする
- 耳鳴りが気になり不安になる
- 耳鳴りで寝つけず、よく眠れない
など
耳鳴りの音・種類から考えられる病気
耳鳴りは、原因によって音の種類が異なります。また、同じ音でも患者さまによって原因となる病気が異なります。
「ピー」「キーン」などの
高音の場合
電子音や金属音に似た「ピー」「キーン」などの音で、耳を塞ぐと音量が上がります。
メニエール病
目の前が回転しているかのようなめまいが起こり、その前後に吐き気や嘔吐、難聴、片側だけの耳鳴り、耳閉感を感じる場合があります。突発性難聴と違い、症状が何度も起きることが特徴です。20~50代の女性がかかりやすく、持続する時間は数分から数時間におよぶ場合があります。
老人性難聴
加齢が原因で、聞き取りにくくなったり、両耳に耳鳴りを感じたりする場合があります。耳鳴りの原因は老人性難聴である可能性が高く、発症の多くは50~60代の方ですが、40代でかかる方もいます。
薬剤性難聴
耳に影響を与える薬(アスピリンなど)を服用すると、聞こえにくくなり、浮動性めまいや耳鳴りが起こる場合があります。服用後の早い段階で症状が現れることが多いです。
突発性難聴
片方の耳だけ急に音が聞こえなくなる難聴で、めまいや耳鳴りの症状も出てきます。片耳だけ聞こえなくなる原因は不明で、ストレスとの関連性が考えられています。
放置すると聴力の改善が難しくなるので、早期治療が必要です。異常を感じたらできるだけお早めに耳鼻咽喉科へご相談ください。
聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)
神経の周囲を包む細胞から発生する良性の脳腫瘍で、ふわふわとする浮遊性めまいや、片耳だけの難聴、耳鳴りなどを伴います。10万人に1人くらいの割合で発症する病気で、中年の女性に多く見られます。サイズが小さいままの場合もありますが、徐々に大きくなっている場合は、MRIなどで詳しく検査することもあります。当院ではMRい検査は実施していないので必要な場合は病院をご紹介させていただきます。
自律神経失調症
ストレスや睡眠不足、疲労などで自律神経が乱れた際に起こる耳鳴りです。短時間で治まるようであれば問題ありません。長時間続き、ストレスを感じる際は治療が必要になる場合があります。
音響外傷
コンサートやライブで、あるいはイヤホン・ヘッドホンで、大音量の音楽を長時間聴いていると、音響外傷を発症する恐れがあります。大きな音により蝸牛の有毛細胞が傷つき、両耳に痛みや耳鳴り、難聴を発症することがあります。すぐに症状が治まれば問題ありませんが、耳鳴りや痛み、難聴が長時間続く場合は耳鼻咽喉科にご相談ください。
「ザー」「ゴー」などの
低音の場合
耳閉感(耳に詰まりがある感覚)を感じ、耳鳴りの音は、ボイラーやエアコンの風の音、トンネルを通っている時のような「ザー」「ゴー」という低い音に似ています。原因のほとんどは、ストレスや首コリや肩こりなどです。
メニエール病
個人差はありますが、「ザー」「ブーン」という低音の耳鳴りが聞こえる場合があります。耳の聞こえにくさや回転性めまいを伴うことがあります。
中耳炎・耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)など
風邪などがきっかけで、滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)や耳管狭窄症を発症するなど、耳管や中耳にトラブルが発生すると、低い音の耳鳴りを感じる場合があります。
低音障害型感音難聴
片側の耳で低音が聞き取りづらくなり、低音の耳鳴りを感じるようになります。20~40代の女性に多い傾向があります。めまいを伴わないのがメニエール病との違いで、突発性難聴より軽症で聴力の早期回復が特徴です。ただし、疲れやストレスが溜まると再発する可能性があります。
急な気圧の変化
急激な気圧の変化が原因で、低音の耳鳴りが現れます。
肩・首の凝り、疲労・ストレス
低音の耳鳴りは、肩や首の凝り、疲労やストレスの蓄積で現れることがあります。
その他
「ゴソゴソ」「ガサガサ」という耳鳴り
耳の中には虫が入る可能性もあります。また、耳垢が動いて音が聞こえる場合もあります。
「グググ」「コツコツ」「ブクブク」「ポコポコ」という耳鳴り
耳周辺にある筋肉の痙攣によって不定期に耳鳴りが聞こえる場合があります。
「ドクドク」「ドコドコ」「ジョー」などの音が続く耳鳴り
「ドクドク」など心臓の音と一緒に聞こえる耳鳴りは、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、外リンパ瘻などの可能性があるため、MRIなど精密検査が必要な場合があります。当院ではMRい検査は実施していないので必要な場合は病院をご紹介させていただきます。